マチフル -machifull-

新潟や日本や東南アジアの街ネタブログ。見たり聞いたり読んだり買ったりの感想メモも。目指すは陸マイラー。

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【沖縄から貧困がなくならない本当の理由】タブーに切り込む…貧困は心の問題

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沖縄、いつか住みたいくらい好きです。
でも現実も知っておこうといろんな沖縄本を読んできましたが、この本はすごかったです。

『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』は、野村證券で沖縄恩納村のサンマリーナホテルを再生し、その後事業再生会社を設立、今は沖縄大学の准教授を務める樋口耕太郎さんが、沖縄の貧困問題に迫る一冊です。

沖縄の貧困問題はウチナーンチュ(沖縄人)の心の奥底にある「無感覚」「無意識」「無関心」にあると樋口さんは言います。
このブログ、沖縄の人も読んでいると思いますが、どうか怒らないでほしい…、そう思うくらいタブーに切り込んでいます。
でもその背景は新潟にも似ているところがあるように思えて、興味深かったです。
もともと沖縄タイムスの電子版で連載していたのだそうですが、よくここまで書けたなぁ…と思います。

◇ ◇ ◇

県民所得は全国最下位、貧困率は全国平均の2倍に上り、沖縄は全国でも突出した貧困社会というのは知っている人も多いかもしれません。
さらに沖縄は、学力、就職率、中途退学、不登校、暴力行為、いじめ、少年刑法犯、給食費未納など、教育関連のあらゆる指標が全国最低水準なのだそうです。
癒しの島、優しい沖縄人のイメージからすると、なんだか意外です。

さらに自殺率も、沖縄が全国で突出して1位なのだそうです。
人口10万人に対する自殺者数は新潟がトップにいるイメージがありましたが、死亡者に対する自殺の割合は沖縄が全国でも突出しているのだとか。
これは意外でした。

全国を回って講演をしているあるセミナー講師は「沖縄は全国的に最も笑いやウケを取りにくい地域の一つだ」と言うのだそうです。
あれ?これ、新潟でもよく言われるなぁ。
なんだか沖縄と新潟は意外なくらい共通点があるのかもしれません。

◇ ◇ ◇

沖縄で笑いやウケを取りにくい理由は、ウチナーンチュが周囲から浮き上がるのを恐れるから、と樋口さんは言います。
これ、新潟もそうじゃないですか?

沖縄社会は、現状維持が鉄則で、同調圧力が強く、出る杭の存在を許さないのだそうです。
だんだん沖縄本じゃなくて新潟本を読んでいる気がしてきました。
でもこの無意識のうちの同調圧力は、きっと沖縄や新潟だけの話ではなくて、全国の地方に共通したものですよね。

新潟は東京という「逃げ場」があるからまだいい、と言っている人がいました。
まわりの目ばかりを気にして古い慣習にとらわれ暮らす地元には居場所がないと感じて、若い人や女性が新幹線ひとつで東京へ流れていく…。
人口流出は新潟県の大きな問題ですが、「出る杭」の行き場があることは悪いことではないのかもしれません。
あとは、戻って来れる場所が地元にちゃんとあればいいのかなと。

◇ ◇ ◇

この本がすごいのは、単に沖縄のタブーに切り込んでいるからだけではありません。
話は沖縄問題にとどまらず、人としてどう生きるべきか、というところにまで至ります。

人の関心に関心を注ぐことで、その人を救い、社会問題の解決につながると著者は主張します。
「人に対して関心を持つ」のではなく、「人の関心に関心を持つ」のです。
これはハッとしました。

人に対して関心を持つのは、時に押し付けになることがあります。
そうではなく、人が関心を持っていることに関心を寄せることで、その人は無関心ではないと感じる、つまり孤独から救われるのです。
樋口さんは従業員一人ひとりの関心事に関心を寄せて、赤字続きだったサンマリーナホテルを再生したのだそうです。

樋口さんはほぼ毎晩、那覇市の繁華街・松山のとある飲食店に客として5時間(!)ほどいて、沖縄の人の話を聞いているといいます。
沖縄に来てから16年間で、延べ3万人の人たちと約2万時間の「心の会話」をしたという樋口さん…。
ちょっとすごいですよね。
どんなお店なのか、気になってしまいました。

◇ ◇ ◇

沖縄本だと思って読み始めたら、実は人を再生する方法を考える「教育本」でした。

「人に関心がない人って言われませんか?」…よく言われます、はい。
関心がないわけではないんですけどね。
僕も古町で「修行」した方がいいのかな…。