マチフル -machifull-

新潟や日本や東南アジアの街ネタブログ。見たり聞いたり読んだり買ったりの感想メモも。目指すは陸マイラー。

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【アジア新聞屋台村】アジアの混沌から見えたグローバル時代の日本人の生き方

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アジア+新聞+屋台、僕的にはもう読むしかないでしょ?ってな組み合わせ。期待以上でした。

『アジア新聞屋台村』は、最近ソマリランドの本で注目を集める作家高野秀行さんが、東京でアジア各国の新聞を発行する不思議な新聞社「エイジアン」に編集顧問として関わった20~30代の十数年の日々を綴った自伝的小説です。

アジア新聞屋台村 (集英社文庫)

アジア新聞屋台村 (集英社文庫)

 


自伝的小説ということで『フィクションをまじえているが、8〜9割は事実にもとづいている』のだそうです。
https://aisa.ne.jp/mbembe/archives/674

◇ ◇ ◇

エイジアンは実在する新聞社なのか調べようと思ったら、高野さんの別の著書『移民の宴』にあっさり載っていました。
『私がかつて仕事をしていたアジア系新聞社「ニューコム」の女性社長、藍淑人さんに電話で聞いてみた。(中略)ニューコムのユニークさは比類がなく、私はこの会社をモデルにした『アジア新聞屋台村』という小説みたいな話を書いている』

ネットでニューコムを検索すると、今は台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、マレーシア、スリランカ、インド、ネパールの10紙の月刊新聞を発行しているそうです。
それだけでなく、不動産事業や国際・国内電話通信代理、インターネット関連事業まで広く手がけているのは、まさに小説の「エイジアン」そのものです。

◇ ◇ ◇

なぜこんなに多くの新聞を発行しているのか。ニューコム…じゃなかった、エイジアンには「まず出す。よかったら続ける。ダメなら止める」という経営方針があるといいます。
東京にあるけれど、ここはアジアの屋台村。店を出すのも止めるのも気楽なもの。違う国の料理を出す屋台が隣り合い、客が増えればテーブルと椅子を増やし、客が減れば席を減らせばいいのです。
『日本人なら何をするにも「まず店を持たねば」「準備を入念にしなきゃ」と考える。ところがここは中華鍋一つと屋台があればとりあえず始めてしまう』
日本人はちょっと慎重すぎるのかもしれません。

でもエイジアン社長の劉さんは言います。
『日本人は失敗が嫌いって言ったけど、それは日本人が職人だから。モノを作らせたら世界で日本人がいちばん。職人に発明や商売をさせたって無理よ。商売は中国系がいちばん。発明は欧米系がいちばん。だから、発明は欧米系に任せて、それを商品にするのを日本人がやって、できた商品は台湾人が売ればいい』
これこそグローバルな時代に日本人が生きる道なんですね。

◇ ◇ ◇

エイジアンを「カイゼン」しようと加わった3人の日本人社員が、会社の危機に直面して取った行動とは。その時エイジアンの人たちは。そして高野さんが下した決断とは。
高野さんの青春ストーリーを通して、多様性とカオスの中で、力まず、何かに頼りすぎず、自立して生きることの大切さが伝わってくる一冊でした。
「私は会社のために頑張る人は好きじゃない。自分のために頑張る人が好き」。劉さん…ではなくて藍さん、会ってみたくなりました。