【運び屋】90歳の麻薬の運び屋…これはイーストウッド自身の実話なのかもしれない
「お金はあるのに、時間だけは買えなかった」
これはクリント・イーストウッド自身のことだったのかもしれません。
映画『運び屋』はイーストウッドが10年ぶりに監督と主演を務めたことで話題の作品。
90歳の老人が実は麻薬の運び屋だったという、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』に載った実話がもとになっています。
イーストウッドの最近の監督作品は『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』『インビクタス/負けざる者たち』『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』など、実話がもとになったものが多いです。
なかでも『アメリカン・スナイパー』は、観ているだけで消耗し疲れ果ててしまうような緊迫感と、観客も静まり返るラストシーンが印象に残っています。
◇【アメリカン・スナイパー】観終わった後の消耗感と、中東で繰り返される現実 - マチフル -machifull- http://fullmatch.hatenablog.com/entry/2017/07/09/235811
実話だから、言ってみれば最初からネタバレなわけです。
それをここまでの作品に仕上げてしまうのは、さすがイーストウッド監督!と思います。
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この『運び屋』は『アメリカン・スナイパー』と違って、たんたんと物語が進みます。
ラジオで流れる歌を口ずさみながら、麻薬を載せたおんぼろトラックを運転して、強面でゴツい兄ちゃんたちに指定された場所へ。
ハイウェイの風景はなんだかロードムービーっぽくて、前に観た『グリーン・ブック』と重なってきます、麻薬を運んでいるという現実以外は。
この老人が運び屋稼業を始めるきっかけになったのが、長年疎遠になっていた家族との距離を縮めたいという思いでした。
仕事優先で生きてきた彼が、孫娘の結婚式の費用をなんとか工面しようと麻薬の運び屋をしてしまうあたりは、たしかに犯罪なのですがちょっと応援してしまうところもあります。
デイリリーというバラを育てる仕事に夢中で、家族をないがしろにしてきたこの老人は、もしかしたら映画にすべてを捧げてきたイーストウッド自身なのかもしれません(疎遠になった娘役を冷たく演じているのは、なんとイーストウッドの実の娘!)。
だから「お金はあるのに、時間だけは買えなかった」というセリフが染みてくるのです。
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イーストウッドのためならお金で時間を買ってあげたい!という映画好きも多いのではないでしょうか。
88歳のイーストウッド。
すでに次の監督作品も噂されているようです。