マチフル -machifull-

新潟や日本や東南アジアの街ネタブログ。見たり聞いたり読んだり買ったりの感想メモも。目指すは陸マイラー。

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【空き家を活かす】豊富な空間資源に「小さな物語」と「遊び」を埋め込む

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シモ古町に空き家(というか、空きビル)を持つ僕としては読まなければならない一冊と思いました。

『空き家を活かす~空間資源大国ニッポンの知恵』は、人それぞれの生き方や暮らしと結び付いた「小さな物語」を空き家に埋め込んで、まちを変えていこうと訴える松村秀一さんの新書です。
松村さんに言わせれば、空き店舗や空き家の多い古町界隈は「空間資源」が豊富で可能性の多い街ということになります。
あとは空き家で「遊び」ができる人がいればいいのかなと。

 

空き家を活かす 空間資源大国ニッポンの知恵 (朝日新書)

空き家を活かす 空間資源大国ニッポンの知恵 (朝日新書)

 

 

小さな物語の反対は大きな物語です。
東京のあちこちで大手不動産が再開発を進めているのは大きな物語といえるでしょう。
一方、地方では、大きな物語で建て替えたり再開発したところで、それに見合うだけのテナントが見つかるの?という問題があります。
自治体の補助金を入れて再開発したのはいいけど、空きフロアだらけの幽霊ビルになっている例も多いです。

建て替えるどころか、取り壊すことすらままならない空き家や空きビルが増えている日本の現状は「空間資源大国」であると松村さん。
戦後から家やビルを一生懸命建ててきた結果、「箱」はあり余っている、そのまま脱け殻にしてしまうのではなく、これらを豊かに楽しく使える「場」にしていければ、と松村さんは呼び掛けます。
そこで必要になるのが「小さな物語」と「遊び」なのだそうです。

◇ ◇ ◇

「まずはミクロから遊びましょうよ」と松村さん。
ミクロとは、まちを形作る個々の建物や空き家のこと。
これらに小さな物語を埋め込んで、じわじわと街に広がっていくという現象は全国各地で起こっており、この本では全国8カ所の実例が紹介されています。

その中のひとつが、僕も何度かブログで書いてきた「東京R不動産」。
東日本橋の倉庫街に増えていた空きビルや空きフロアといった空間資源に新しい物語を埋め込もうと、若いアーティストたちが思い思いの展示を始めた「CET(Central East Tokyo)」をきっかけに、このような眠っている空間資源を紹介するブログが始まり、そこから全く新しい不動産サイトが誕生したのです。

大事なのは「仕事」ではなく「遊び」から始まるということ。
今では全国に広がりアクセス数も多い東京R不動産も、最初は空きフロアを見つけ、その魅力をブログで紹介するという遊びから始まりました。
仕事には目標とするゴールが定められるのが普通ですが、遊びにはゴールがなく無限の広がりが生まれると松村さんは言います。
遊びといってもふざけてやるという意味ではないのです。
「真剣にやれよ!仕事じゃねぇんだぞ!」と言ったというタモリさんの言葉を思い出しました。遊び、大事。

◇ ◇ ◇

「ミクロから遊ぶ」と言っても、それがひとつの建物や部屋にとどまるのではなく、まちに広がっていってこそ、豊かな遊びになると松村さん。
北九州市に始まり、今では全国に広がっている「リノベーションまちづくり」も、単にひとつの建物や部屋をリフォームするのではなく、まちに対して開かれたリノベーションを行うという意味合いが含まれていたと言います。

さて、ウチの空きビルもリノベで少し遊んでみましょうかね。