マチフル -machifull-

新潟や日本や東南アジアの街ネタブログ。見たり聞いたり読んだり買ったりの感想メモも。目指すは陸マイラー。

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【タレンタイム 優しい歌】ただの青春映画に終わらせないモザイク国家の現実

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旅行者目線ではいろいろな民族や文化が共存しているのはマレーシアの魅力だけど、そこに暮らす人にとってはいろいろ大変そうです。

『タレンタイム 優しい歌』は2009年のマレーシア映画です。
本国での公開から8年も経って、このたび日本で劇場公開されたこの映画。8年にわたって自主上映が続けられ、多くのファンが生まれ続けてきたそうです。


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タレンタイムというのは「talent time」。
いわば学校で行われる歌や踊りを中心とした一芸グランプリです。
タレンタイムにかかわる高校生たちを描く青春映画ですが、民族や宗教が異なる人々が混在するマレーシアの現実を描きだした社会派な面もあり、見応えのある作品です。

最初は、突然タレンタイムが行われることになったり、男子高校生マヘシュの叔父が結婚式当日に突然殺害されたり、転校生ハフィズのお母さんがゲーゲー吐き出したりと、いきなりの展開が多くて戸惑ってしまいますが、タレンタイムのオーディションで歌が披露され始めると、その芸達者ぶりにひき込まれてしまいます。
この楽曲の良さが、長年たくさんの人に愛された理由のひとつでしょう。

歌とともに気になったのがセリフ。
マレー語に英語、中国語、タミル語が混在しながらストーリーが進んでいきます。
以前マレーシアのジョホールバルでバスを待っていた時に、僕の後ろに並んでいた地元の女子学生たちが、英語にマレー語、中国語をまぜこぜにして話していたのを思い出しました。
これがマレーシアの日常なんですね。

多民族国家マレーシア。
でもそれは完全に融合したミックスではなく、微妙な距離感でそれぞれが存在するモザイクなんです。
映画でもマレー人の女子学生ムルーとインド系でヒンドゥー教徒のマヘシュの恋愛の行方から、民族間、宗教間の分断が露呈してしまいます。
そうそう、マヘシュは耳が聞こえないのですが、健常と障害のハードルより民族宗教のハードルの方がずっと高いようです。

このまま民族や宗教で分断してしまうのか。それとも壁を越えられるのか。
ムルーとマヘシュの恋の行方は。
そしてラストシーン、ハフィズのパフォーマンスで民族融合の可能性を示唆するサプライズが。
このあたりは実際にスクリーンで観ていただきたいところです。
渋谷のシアターイメージフォーラムで上映中です。