マチフル -machifull-

新潟や日本や東南アジアの街ネタブログ。見たり聞いたり読んだり買ったりの感想メモも。目指すは陸マイラー。

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【ミッドナイト・バス】新潟が舞台…やさしすぎる男とその家族たちの再生の物語

「お父さんは何も言わない。いつも黙って見て見ぬふりばかり」
映画の予告編にも出てくる娘さん役のセリフがグサリと刺さりました。

伊吹有喜さん原作の『ミッドナイト・バス』は、新潟と東京を結ぶ高速バスの運転手さんを主人公に、その2人の子どもと元奥さん、恋人とが、すれ違い、揺れ動く様を描いた作品です。

 

ミッドナイト・バス (文春文庫)

ミッドナイト・バス (文春文庫)

 

 

このたび映画化され、先週から新潟で先行公開、27日からは全国の30を超える映画館で公開されています。
上映時間の95%を新潟県内でロケしたと言われており、万代シテイや信濃川、佐渡など、県民にはなじみの深い場所が次々登場する映画になっています。
見慣れた新潟の風景が全国の映画館で流れているのは少し不思議な気もします。

でもこの作品は、小説を読んでも分かるように、新潟のご当地映画で終わるものではありません。

◇ ◇ ◇

僕はつい主人公の高宮利一と子どもたちの関係を中心に見てしまいました。
東京の仕事を辞めて突然帰ってきた息子に「お前、いったい何がしたいんだ?」と父。
言いたくなる気持ち、分かるなぁ。

でもそんなお父さんも、元奥さんや恋人に対しては「いったいどうしたいの?」と、観ていてもどかしく思ってしまいます。
相手を思いやるあまり、少しやさしすぎるのでしょう。
娘にもきっと見て見ぬふりをしているわけではないんですよ。
…なんか僕が言い訳したくなってしまいます。

このストーリーが描いているのは中年男の悲哀だけではありません。
親の介護と自身の体調不良に揺れる元奥さん、「もう40近いし」が口癖?の利一の恋人、東京で挫折して実家へ戻ってきた息子、夢と結婚の間で揺れる「アヤニャン」娘…。
それぞれの世代に「あるある」と感情移入できる部分があると思います。

そしてところどころで挟み込まれる深夜バスのシーン。
僕もたまに新潟東京間で乗るのですが、他の乗客を見て、この人はどうして東京へ向かっているのかな…なんて。
余計なお世話ですね。あまりじろじろは見ないですが…。
新幹線とは違って、深夜バスって何か背負っている感がある気がします。乗る人はみんな無口で。
だからこそ伊吹さんが作品の題材に選んだのでしょう。

◇ ◇ ◇

切なさや温かみなど心の動きをじっくりとらえる作品に、新潟の静かでしっとりした風景は合っているのかも、と思いました。
ある方は「日本版『マンチェスター・バイ・ザ・シー』だ」と評価されていました。
そういえば新潟市も「バイ・ザ・シー」だし。
マンチェスター…、観たかったんだよなぁ。
観たい時に観ておかないと、ですね。

『ミッドナイト・バス』は有楽町スバル座などで上映中です。